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なぜ計算問題から詰めるのが効率的か
E資格の出題は知識問題が中心ですが、そのなかに計算を伴う問題が含まれます。この計算問題には、直前期に取り組む価値がある特徴が3つあります。
- 答えが1つに定まる──知識問題のような「どれも正しそう」で迷う余地がありません
- パターンが限られている──出題の型はある程度決まっており、そこを押さえれば対応できます
- 手が覚えていれば速い──1問あたり約70秒という時間配分のなかで、確実に処理できる問題は貴重です
逆に、公式をうろ覚えのまま本番に臨むと、計算に時間を取られたうえに間違えるという最悪の展開になります。ここでは頻出の10パターンを、公式・例題・つまずきポイントの順に整理していきます。
💡 電卓は「画面上のもの」だけです
E資格の会場では自分の電卓を持ち込めず、使えるのは画面上の一般電卓のみです。マウス操作は思った以上に時間を取られるので、できるだけ暗算と式の整理で処理するのが現実的です。当日の持ち物やルールは試験当日の流れと持ち物にまとめています。
①CNNの出力サイズ
最頻出です。これだけは確実に取りたいところ。
n=入力サイズ、k=カーネルサイズ、s=ストライド、p=パディング、d=ダイレーション(膨張率)
ダイレーションを使わない通常の畳み込みでは \(d=1\) なので、式は \(O = \lfloor (n + 2p - k)/s \rfloor + 1\) に簡略化されます。
つまずきポイント:「カーネル3・ストライド1・パディング1ならサイズ不変」「ストライド2なら半分」という2つの結果は、暗記しておくと検算に使えます。ダイレーションは \(d(k-1)\) の部分だけ変わると覚えてください。
🔧 CNN出力サイズ電卓で検算する →②パラメータ数
「+1」はバイアス項。出力チャネルごとに1つ持ちます
つまずきポイント:バイアスを忘れるのが最頻出のミスです。また、畳み込み層のパラメータ数は入力画像のサイズに依存しません(カーネルとチャネル数だけで決まります)。この性質が問われることもあります。
③受容野
出力の1画素が、入力側のどれだけの範囲を「見ている」かを表す指標です。
層を1つ通るごとに、受容野は \((k-1) \times (\text{それまでのストライドの積})\) だけ広がります。初期値は1です。
→ 3×3を3層重ねると、7×7の範囲を見ていることになります
つまずきポイント:「小さいカーネルを重ねると、大きいカーネル1層と同じ受容野をより少ないパラメータで実現できる」という考え方は、VGGなどの設計思想として問われます。実際、7×7を1層使うより3×3を3層重ねるほうがパラメータは少なくなります。
🔧 チェーン受容野を計算する →④計算量(乗算回数)
\(802816 \times (3 \times 3 \times 3) = 802816 \times 27\)
→ 21,676,032
つまずきポイント:まず出力サイズを求めてから掛ける、という順番を固定してください。焦ると入力サイズで計算してしまいます。桁が大きくなるので、\(10^6\) 単位で概算する感覚も持っておくと選択肢を絞れます。
⑤自己情報量とエントロピー
自己情報量(単位はbit)
\[ H(X) = -\sum_i P(x_i) \log_2 P(x_i) \]平均情報量=エントロピー
→ 偏るほどエントロピーは小さくなります(=予測しやすい)
つまずきポイント:底が2か自然対数eかで答えが変わります。情報理論の文脈ではbit(底2)、機械学習の損失関数では自然対数を使うことが多いので、問題文の指定を必ず確認してください。エントロピーは「驚きの平均」と捉えると、偏るほど小さくなる理由が腹落ちします。
🔧 エントロピーの変化を可視化する →⑥KLダイバージェンス
\(= 0.5 \times (-0.848) + 0.5 \times 2.322 \approx \) 0.737 bit
つまずきポイント:KLダイバージェンスは非対称です。つまり \(D_{KL}(P\|Q) \neq D_{KL}(Q\|P)\) であり、「距離」ではありません。この非対称性はよく問われます。また、常に0以上で、P=Qのときだけ0になる点も押さえてください。
⑦活性化関数の微分
つまずきポイント:この0.25という数字が勾配消失の説明に直結します。逆伝播では層を通るごとに微分が掛かるため、最大でも0.25が層数だけ掛かることになり、深いほど勾配が消えていきます。「シグモイドは勾配消失しやすい」と暗記するのではなく、この数字とセットで理解しておくと応用が効きます。
🔧 活性化関数と導関数を見比べる →⑧ソフトマックスと交差エントロピー
交差エントロピー誤差
→ (0.659, 0.242, 0.099)(合計1になることを検算に使えます)
つまずきポイント:実装ではソフトマックスを二重に適用しないことが重要です。PyTorchの CrossEntropyLoss は内部でソフトマックスを含むため、モデルの出力にsoftmaxを付けると二重適用になり学習が崩れます。コード読解問題で狙われやすいポイントです。
⑨ベイズの定理
分母:\(0.0099 + 0.99 \times 0.01 = 0.0198\)
→ \(0.0099 / 0.0198 = \) 50.0%
感度も特異度も99%と高性能に見えるのに、陽性と出ても実際に罹患している確率は50%にとどまります。元の有病率が低いと、偽陽性の絶対数が真陽性に匹敵してしまうためです。
つまずきポイント:この直感のズレは試験でも実務でも重要です。医療現場でAIの判定結果を扱う場面でも、同じ構造の誤解が起こります。数字を1つ覚えるより、「有病率が低いと陽性的中率も下がる」という関係を理解しておくほうが応用が効きます。
🔧 1万人のドット図で有病率の罠を体感する →⑩評価指標(混同行列)
適合率 \(= 80/90 \approx \) 88.9%
再現率 \(= 80/100 = \) 80.0%
F値 \(\approx \) 0.842/特異度 \(= 890/900 \approx \) 98.9%
つまずきポイント:不均衡データでは正解率が高くても意味がないことがあります。上の例でも97%と高く見えますが、見逃し(FN)が20件ある点は正解率に埋もれています。「適合率と再現率のどちらを重視するかは、誤検出と見逃しのどちらが痛いかで決まる」——医療なら見逃しが致命的、と分野を思い浮かべると迷いません。
🔧 閾値を動かして感度と特異度の関係を見る →公式を覚えたら、本番形式で解いてみる
計算問題は「解ける」と「時間内に解ける」が別物です。実践模試は理論100問とコード特化52問。全問に解説をつけているので、間違いの原因を分類しながら弱点を潰せます。
まとめ──直前期の使い方
10パターンを振り返ります。
| パターン | これだけは覚える |
|---|---|
| ①出力サイズ | k3・s1・p1でサイズ不変/s2で半分 |
| ②パラメータ数 | バイアスの「+1」を忘れない |
| ③受容野 | 3×3を3層で7×7相当 |
| ④計算量 | まず出力サイズを出してから掛ける |
| ⑤エントロピー | 底が2かeか、問題文を確認 |
| ⑥KL | 非対称。距離ではない |
| ⑦活性化の微分 | シグモイドの最大は0.25 |
| ⑧softmax・交差エントロピー | 二重適用しない(実装問題) |
| ⑨ベイズ | 有病率が低いと陽性的中率も下がる |
| ⑩評価指標 | 不均衡データで正解率は当てにならない |
直前期にこの10個を回すなら、公式を眺めるだけでなく、実際に手を動かして数字を出すことをおすすめします。本番で使えるのは「見たことがある公式」ではなく「手が覚えている手順」です。
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✓ 掲載した計算値について
本記事の計算例は、すべて実際に計算して検算したうえで掲載しています。ただし出題の傾向や範囲はシラバスの改定で変わる可能性があるため、最新の範囲はJDLA公式サイトでご確認ください。